きゅうりとレタス

2011.10.19 (Wed)

きゅうりを切った。

黄色く変色していた。

切っても切っても

変色していた。



突然、涙が出た。








今日、ひどく疲れていたのだと思う。





帰り道、

家と反対の方向にあるスーパーへ

買物に寄った。


半分のレタスと

バラ売りのきゅうりを一本買った。



歩きなれない道。

しかも

足元の全く見えない暗い歩道を

歩いていた。


見えないくせに、

カツカツとハイヒールの音をたてて

確実に淀みなく歩いた。



「穴があったら、落ちる。」

そう思いながら

一方で理解している、

たぶん 

この歩道に穴なんかないことを。







急に記憶が遡った。







真っ暗な夜道を

ひとりで歩く小学生の私。


「穴があったら落ちてしまう。」

それが怖くて、

すり足で歩いていた。


父の入院している病院に行った

帰り道だ。





私はずっと良い子強い子のフリを続けていた。





長く体調を患う父と

父の機嫌が悪くなるから

お願い良い子にしていて、と

イライラしながら懇願する母。



進んで家業の手伝いをし、

いらぬ音をたてず、

学校では先生に褒められるような

良い子でいて

いつもよい成績でいることだけが、

誰にも怒られず

自分の心が平和でいられる

唯一の方法だったから。




その日も

父は機嫌が悪かった。

母はもう帰りなさいと言った。

一人で帰らせるのかと問う父と母の

いさかいが始まるのを避けて

一人で全然平気だから、と歩きはじめた。




真っ暗な道。

側溝に左足が落ちた。

私は ひとり、

泣きながら帰った。




DSC_0535_convert_20111019223356.jpg




レタスを一枚剥ぐと

二枚目がヤラレていた。

三枚目もその次もやられていて

ちいさなちいさな 

レタスになった。




たった一本のきゅうりも

切っても切っても変色したままだったとき、

涙があふれて止まらなくなった。








体も、心も

健康でいつづけることは、

難しい。




でも、思う。

泣けるわたしは まだ大丈夫。




さらに思う。

こうして書けるわたしは、

全然、大丈夫。












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