記憶の封印

2016.12.21 (Wed)




私は同窓会に出ない。

おそらく
自分の学校での記憶が虚ろで
その輪に入っていく自信がないから。

「○○ちゃんよね」
すれ違いざまに
フルネームで呼んでくれるのに
私のほうでは全く名前が浮かばない。
「知ってる人?」心でつぶやく、
そんなことも多い。

私はどこで記憶を失くしたんだろう。
いつもそう自分に問いかけてきた。

ところがこの秋、
突然思い出したことがある。
いきなり記憶の扉が開いて
出てきた名前-----
「あっちゃん」

そうだ。
小学校の時
私はずっと、「あっちゃん」の隣にいた。





私はたぶん優等生だった。
いや、正確に言うと
常に先生や親の期待を裏切らない生き方以外を
知らなかった。
たぶん、何かをごまかし
何かを呑み込んで
「ハイ」と答えること以外出来なかったのだ。

そんな私に先生は
あっちゃんを任せたのだと思う。
あっちゃんは意思表示をほとんどしない子だった。

みんながワクワクする席替えがあっても
私の隣はあっちゃんだった。
右が左になるだけ。
教室を移動するときも
朝礼に行くときも
遠足も
運動会も
あっちゃんと手をつないでいた。

あっちゃんと会話した記憶はない。
首を少し縦に振って
うなずくあっちゃんの
少し困ったような恥ずかしそうな顔。
いや、顔はぼんやりとしていて
憶えているとは言えない。

ただ、
少し猫背でうつむいて
申し訳なさそうに小さな歩幅で歩く
そのイメージだけが
浮かんでくる。





あっちゃんは、
私と同じ地元の中学校に進学しなかったのだろうか。
中学校の記憶がまた朧気で
判然としない。

もしそうなら、
私は小学校の卒業の日、
あっちゃんにちゃんとお別れを言ったのだろうか。



そう考えたとき、ハッとした。



私は何かを封印しているのではないか。
何かを忘れてしまいたくて
小学校時代の記憶を
丸ごと封印したのではないか。

優等生のふりをした私は
何も言わないあっちゃんに
陰で
ひどいことをしたのではないか。

何ががあったのか 
なかったのか
ちゃんとお別れが言えたのか 
言わなかったのか

真実はわからない。
記憶がない。





口数が少なく真面目でよく働く
優しい人と結婚して
元気な子供が二人くらいいて
ふっくら太った
肝っ玉母さんになっているといい

あっちゃん-----






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