宝石箱

2011.04.15 (Fri)
数年前 
押し入れの段ボールの中から
宝石箱を見つけた

ふたを開けた瞬間
すこし音の欠けた
「白鳥の湖」といっしょに
淡い記憶が溢れだしてきた

  *  *  *

わたしはたぶん
小学3年生くらいだったろうか
姉が両親から
宝石箱をプレゼントしてもらった
姉の宝石箱には
ふたの部分に 
ゴブラン織りのバラの花模様の刺繍が
埋まっていて、
金色の猫足がついていた

私は、それがうらやましくて
次の誕生日に
宝石箱をリクエストしたのだと思う。

願いかなって手にした宝石箱は
バラの刺繍も
金の猫足もついていない
木製の四角い箱で
すこし がっかりした

でも、ふたをあけたら
「白鳥の湖」のオルゴールが流れて
磁石のまるいステージの上で
片足で立ったバレリーナが
顔を上に向けて くるくると回っていて

すごく、嬉しかった。

  *  *  *

忘れ去られていた宝石箱に
もう 
バレリーナは 居なかった

バレリーナの踊らないステージで
音の欠けた
淋しい「白鳥の湖」が鳴った

でも
その私を一瞬にして
ときめかせるものが
宝石箱の中で眠っていた

バレリーナでも
キラキラの指輪でもなく

10個ほどの
「ねこやなぎ」

ふわふわのままだった


そう、私は
「ねこやなぎ」を 大切に可愛がっていた
「ねこやなぎ」を 掌にのせて、
指で触ったり 頬ずりしたりしていた

動物を飼った事も
ぬいぐるみを抱いた事もない私にとって
その手触りは
他にたとえようのない
いとしいものだったのだ

この感覚は平成の子供には
きっとわからないんだろう

高度成長期前の日本
デパートもない田舎町で暮らす子供にとって
ふわふわの手触りの「ぬいぐるみ」は
「外国」と「お金持ち」の物語にだけ存在する
決して手の届かないものだったのだ

フモフモしてる♥


宝石箱も
バレリーナも
いつの間にかどこかへ行ってしまった

でも 私は今
あのころの「ねこやなぎ」の感触を思い出しながら
子猫たちの
柔らかさとあったかさに
毎日触れられる幸せを 
満喫している。
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